脱炭素の波に乗るか、乗り遅れるか──日本のエネルギー政策を考える

最近、政府は新たな「エネルギー基本計画」と「地球温暖化対策計画」を発表し、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの実質ゼロ)に向けて、2035年度には2013年度比で60%減、2040年度には73%減という目標を掲げました。これは、日本が脱炭素社会の実現に本気で取り組む姿勢を示すものですが、一方で「本当に達成できるのか?」という疑問の声も上がっています。

経営者の視点から見ても、脱炭素は単なる「環境問題」ではなく、「企業の成長戦略」に直結するテーマです。では、なぜ今、脱炭素が重要なのか? そして、企業はどのように対応すべきなのでしょうか?

脱炭素の流れは不可逆的──世界の動向と日本の課題

世界に目を向けると、米国ではトランプ政権時代にパリ協定を離脱し、化石燃料の活用を推進する政策が取られました。また、欧州でも経済性やエネルギー供給の安定を優先する「現実路線」へのシフトが見られます。このような動きを見ると、日本だけが厳しい目標に縛られているように感じるかもしれません。

しかし、長期的に見れば、脱炭素の流れが止まることはありません。欧州の大企業は、環境対策が不十分な企業との取引を避ける傾向を強めており、投資家も「ESG投資」(環境・社会・ガバナンスを重視した投資)を拡大しています。つまり、短期的に緩和の動きがあったとしても、企業が脱炭素に取り組まなければ、グローバル市場での競争力を失うリスクが高まるのです。

日本企業に求められる「攻めの脱炭素」

現実問題として、日本は火力発電に大きく依存しており、再生可能エネルギーの拡大には多くの課題があります。確かに、目標達成は簡単ではありません。しかし、それを理由に行動を先送りするのは、経営者として得策ではありません。

むしろ、今こそ「攻めの脱炭素」に踏み出す好機です。例えば、以下のような取り組みが考えられます。

省エネ技術の導入——エネルギー効率の向上によるコスト削減
再生可能エネルギーの活用——企業イメージの向上とリスク分散
脱炭素型の新規事業開発——市場のニーズを先取りし、新たなビジネスチャンスを創出

すでに多くの企業が、脱炭素を経営戦略の柱に据えています。例えば、大手メーカーでは、工場のCO₂排出を削減するために再生可能エネルギーの導入を進めたり、製品のライフサイクル全体での排出量を管理する取り組みを強化しています。

未来を見据えて、今こそ行動を

脱炭素への取り組みは、「環境のため」だけではなく、「企業の未来のため」に不可欠です。「コストがかかるから」と後回しにするのではなく、いかに競争力を高めながら進めるかを考え、行動することが求められます。

脱炭素の波に乗るか、乗り遅れるか。それは、今の私たちの決断にかかっています。